ダイヤモンド買取の最新情報

きらびやかな人たちを目にして、私は少しばかり無理して買った自分のブランドもののバッグを一瞬隠してしまいたくなったものだ。私たちはクラス社会に生まれなかったので、使用人もいないかわりに誰でもブランドを手にすることができる。
本物にこの手で触れ、その手触りの滑らかさや軽やかさ、美しさに感嘆する自由も与えられている。とりもなおさず差別の歴史でもあり、決して一面的な見方だけをすることはできない問題ではあるけれど、そんな時代にやってきたブランドは、その背景の豊かさを伝える術を持たないままに、ただ名前だけ、あるいは値段の高さだけが“風俗”として話題になり、ブームになっていたのである。
日本人にはその重さ、価値をしっかり受けとめるだけの力がなかった。ブランドの背景にある幾千幾万の人の手の力を感じ取り、それに敬意を表しつつ使いこなすことのできる“クラス”の精神を持ちあわせている人がいなかったのだ。今、相変わらずの金満日本に世界中から押し寄せてくるブランドは玉石混交の様子である。
その中から本物を見極め、買う、買わないに関わらず、背景の歴史を理解していくことは大人として必要な態度であるだろう。ひいては失われてゆく日本の職人文化へ思いを至らせることになる。
シャネラー、グッチャーとは恥ずかしくも愚かな呼び名である。だがそれに目を曇らされてしまうのは狭量すぎる。

本物の「ブランド」には、どんなに機械が発達しても決して成し得ない、人間の血の長きにわたる月日の積み重ねの中から生まれる、微妙な差異が宿っている。年に何回か、新宿パークビルにあるインテリアスタジオ「OZONE」でインテリアプランナーのTさんと共同セミナーを開いている。
ここの常任講師であるTさんの提案で“住”と“衣”とを同じ視点で眺めるという発想のもと、毎回いろいろなテーマに取り組んでいる。こういった視点で何かを感じ取ることができなければ、私たち日本人はいつまでたってもモノの奴隷にしかすぎないのではないだろうか。ある時“部屋着について”をテーマに話したことがある。
私はかねてから部屋にいるとき人は何を着るかということに興味があった。昨今はデパートやインテリア雑貨の店に行くと部屋着のコーナーがあり、決まってジャージィ素材の黒や霜ふりグレーなどのジャンパースカートや丈の長いワンピースを売っている。
私はどうもこの“部屋着”というジャンルを与えられた服たちが納得できないのだった。だって、なぜ部屋着はジャージィでなくてはならないのか。
妙に丈の長いデザインは何の意味があるのか。黒やグレーという決まって無彩色なのも不気味だ。なんだかストイックで、味気がない。
考えてみればこれらの部屋着にはすべて理由がある。ジャージィは体を締めつけずリラックスできる素材、長い丈なのは脚を気にしなくてもよいし、無彩色はインテリアの色の傾向に合わせてあり、さらに狭い部屋の中で目触りにならないため。
それから、あえてこうした部屋着を購入する層というのが「私って主婦でもただのオバサンじゃないのよ。ハーブや藍染めの豆皿を愛する知的でクリエイティブな女なの」といった自負のある人々と考えられるため、彼女たちの、華美を嫌いカジュアルを好むセンスに応えているということだろう。

部屋着たちには何の罪もない。部屋着として出来たものを売っている、わざわざ買いに行く、というのもおかしなものだと思うのである。
何か押しつけられたマニュアルにのっとっているように感じられるのだ。なんだか少し淋しい気がする。
そんな気持ちもあり、セミナーを開く前に、何人かの女性に「部屋にいるとき、何を着ていますか」という質問をぶつけてみた。すると何人かの人が“新しい服の慣らしをする”と答えてくれたのが楽しかった。
特に夏はノースリーブを着る時に部屋の中で何日か着てから外出するという人の意見が多かった。フォーマルなど、ふだん着ることの少ない服も部屋で着て暮らし、なじませる。
なんとなく昔の、ダンディと言われた男たちが新品の服やジーンズを洗ってから着て、壁に叩きつけて型を少し崩して着たりすることにも似て、しゃれっ気のあるアイディアだと思った。部屋に全身の映る鏡があれば、もう万全だろう。
Tさんはチノパンにシャンブレーのシャツといった格好をしていると話してくれた。70〜80歳くらいになったときにもこの格好が似合っていたいと言う。
KやJのような素敵なおばあさんになるのだろうな、と想像する。それに底がジュート巻きになったエスパドリーュを履いているそうだ。
この“部屋履き”を履くか履かないかでも、部屋にいる時の装いはかなり違ってくる。ミラノで靴を履いて生活してみたとき、家にいるときでもタイトスカートからベルト、シャツにピアス、化粧までもきちんとしたくなって、驚いたものだ。
しばらくすると腰が痛くなって靴の生活はあえなく挫折したのだが、少なくとも足元を固定するだけでふぬけた気分で一日を過ごすということはなくなるということがわかった。

私は部屋履きとしてパリのインテリア雑貨の店“メゾンドファミーュ”で買ったボルドー色のかかとのないミュールと、同じくパリの“パラレル”という靴屋の、ごく薄くなめしたスエードのバレリーナシューズを愛用している。爪先がきれいなスクエアトゥになっていて、色が何色もある。
すべてフランスらしいシックな色ばかりな上に安いので、思わず全部買い占めたくなる。とりあえず栗色を一足購入して、ストレッチパンツや着心地がよくて手離せない古いカシミアのセーター、絹の古着のアロハなどに組みあわせている。


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